東京大学といえば、言わずと知れた日本最難関の大学である。
世間の東大のイメージといえば、テレビ番組で見る程度のものではないだろうか。
クイズ番組が流行する昨今、現役東大生や東大卒タレントが華々しく活躍する姿をよく目にする。
何となーく優秀な印象を持っているかもしれない。
その東大「なんか」に行かなければよかった、という、なんともキャッチーなタイトルに惹かれ購入。
私自身も世間でいう高学歴を有している。
残念ながら東大卒ではないが、本書の内容に共感できる部分が多々あったので本記事を書くことにした。
本書を薦めたい人
- 勉強が得意だが人付き合いが苦手な学生
- いい大学に入れば幸せな人生が待っていると信じている親や子ども
- 高学歴な人間の不幸な話が蜜の味に感じる人
- 高学歴を手にしたものの社会人生活に疲弊しているサラリーマン
(何を隠そう私のことである)
170ページほどと分量も多くないし、内容もシンプルである。
1時間ほどあればざっと読むことができるので、興味があればぜひ手に取ってみてほしい。
東大なんか入らなきゃよかった 内容紹介
紹介文をもとに、本書の内容を簡単に紹介しておきたい。
東大は、人生の幸せを約束してくれない。
東大いじめ、東大プア、 東大うつ。
東大卒の著者が、「東大に人生を狂わされた人たち」を徹底取材し、
自らの経験とともに、「東大の裏の顔」を洗いざらいぶちまける。
引用元:飛鳥新社HP 東大なんか入らなきゃよかった 誰も教えてくれなかった不都合な話 内容紹介より
東大出身で内部の事情にも詳しい筆者が、友人や先輩・後輩本人、あるいは紹介された人物にインタビューした内容が赤裸々に語られる。
東大という一見華々しい世界の中に渦巻く、知られざる負の側面を垣間見ることができる。
大学というのは基本的にクローズドな世界なので、関係者以外では知り得ない事実がたくさんある。
大学を卒業した今であれば、オープンキャンパスに行ったり、OB・OGの話を聞くことが重要なのはこういう側面があるからだと理解できる。
しかし、大学受験の世界では偏差値至上主義が幅を利かせ、自分の学力レベルと同等あるいは上の大学を目指す、ということが当たり前に行われている。
努力して努力して、東大という最強の学歴を勝ち取った結果、合わなくてもよかった不幸に見舞われるかもしれない。そんなお話。
「東大卒なんだから、できるでしょ?」の呪いに苦しめられる人たち
・対人関係が苦手な東大法学部卒がメガバンク営業になったら…
・東大を出てキャリア官僚に→月200時間超の残業地獄
・年収230万円! 元駒場寮生の警備員
・地方公務員になった東大卒が経験した壮絶いじめ
・勉強だけできても…博士課程5年目で八方ふさがり
引用元:飛鳥新社HP 東大なんか入らなきゃよかった 誰も教えてくれなかった不都合な話 内容紹介より
「なにを当たり前なことを。”高学歴=仕事ができる”とは限らないだろ」
「東大卒なのに・・・そんなこと本当にあるの?」
「気を付けないと自分もこうなるかも・・・」
どう感じるかはあなた次第。
感想
まとまりのない文ではあるが、読んで感じたこと・考えたことなど。
「東大生の3分類」は高学歴あるある
著者は東大生を次の3種類に分類していた。
- 天才型:才能あふれる本当に頭のいいタイプ
- 秀才型:コツコツ努力する真面目で堅実なタイプ
- 要領型:テクニックで受験を乗り切る効率的なタイプ
東大は1:6:3くらいと述べられていたが、他の大学でも比率の差こそあれ大体この3種類に分けられるだろう。
ちなみに本文中には天才型の例として
必修科目である数学の担当教官は、ただでさえ難解な講義を、なんということだろう、片言の日本語で行うドイツ人だった。
(中略)
一方で、高校生のころに数学オリンピックに出場したというクラスメートは、毎回嬉々として講義を受けている。どうやらこの意味不明な講義は彼にとって大変充実した時間であるようだ。しばしば、教官と熱いディスカッションをしている。しかも、日本語が不得意な彼に配慮して英語で!
というエピソードが描かれていた。
凡人から見たら、まさに絶望的な状況である。
そして、本当にこういうことが起こり得るのが大学。あぁ嫌なこと思い出した・・・
大学というのは、たとえ偏差値が高かろうが大半が平凡な人間である。
ごく一部の非凡な才能を目の当たりにして、多かれ少なかれ心を折られていくものである。
世界は残酷なのだ。
高学歴が無意味なことは高学歴が一番知っている
高学歴ほど「高学歴の無意味さ」を理解している人間はいない。
高学歴というのは、ある時点で勉強が人並み以上にはできたことの証明にすぎない。
にもかかわらず「学歴がいい=色々な面で優秀」と見なされてしまいがちである。
高学歴すごい!と思うのも口にするのも自由である。単なる世間話レベルなら何の問題もない。
質が悪いのは、高学歴が無意味だと理解しているくせに嫌がらせのためだけに利用する人である。
高学歴な人の多くは、高学歴であることを時に褒められ、時に尊敬され、時に羨まれてきた経験がある。
しかし一方で、上に述べたように圧倒的に優秀な人間にも出会う確率が高く、自分の大したことのなさもよく知っている。
そうした周囲の認識と自己認識のギャップに苦しむことになる。
「高学歴だから優秀でしょ」といわれてしまうと、優秀でない高学歴の行きつく先はイバラの道である。
優秀でなくてはいけないと思い込み、優秀であろうとするけれどうまくいかない。真面目で完璧主義だとメンタルを病む。
あいつは思ったよりできないな、と上がっていたハードルの分だけ損をする。
高学歴のくせに、と嫌味を言われる。そんなことは自分が一番わかっているんだ、と内心傷つく。
忘れないでほしい。高学歴というのは勉強が人より少しばかり得意であるにすぎないことを。
ちなみに余談だが、私がかつて参加したインターン先で
「〇〇大生なのにそんなことも知らんのか~」
という実にウザい(笑)絡み方をしてくる人がいた。
ネットで調べた知識をその場でひけらかして勝ち誇られても・・・困ります。
大学受験で必要な能力≠社会で必要な能力
大学に合格して卒業するだけなら、勉強ができさえすればいい。
どんなに人格が破綻していようが、入試で合格点が取れて、講義の単位が取れて、論文が書ければいい。
しかし社会に出ようとした瞬間から、勉強以外が求められる。むしろ勉強が求められなくなる。
言わずもがな当たり前の事実である。
大学の出口には、ここに大きな落とし穴がある。
勉強は一人でもできるが、仕事は一人ではできないことが多い。
一人で自分と向き合って勉学に励んできた人間にとって、いきなり人と関われと言われてもどうしていいかわからなくなってしまう。
学歴に夢ばかりみた結果、こういう結末を迎えるのが一番つらい。
「結局コミュ力かよ・・・」「その通り」
これは持論だが、大学生活でコミュニケーション能力は身に付かないと思う。
大学というのは、高校までのようにクラスで同じ人間と長い時間を過ごすことがない。
様々な人と交流を広げ、人間関係を築く機会という良い面がある一方で、なじめない人間も少なからずいる。
ところが、幸か不幸か、無理になじむ必要もない。
小学校のように無理にお友達グループを組まされることもない。二人組が組めなくて恥をかいたりしない。
人と関わる外部からの強制力が働かないのが大学である。
結局それまでに身に付けたコミュ力がそのまま継続する。
ここで一念発起して友達を作るべく努力できる人間は、そうしたコミュ力をすでに持っている。
大学に入れば友達も交際相手もできて、楽しいキャンパスライフが送れるかどうかは自分次第である。
サークルや部活動にも入らず、友達づくりにも苦労し、授業のノートを借りることも試験の過去問を入手することもできない。結果的にいい成績も取れず、希望の研究室やゼミに入ることもできない。
という負のループに陥る可能性を忘れてはいけない。
そして、高学歴ほどこういう人の割合が大きくなるのも自然の摂理。
ひとつ幸せなことは、自分と似たような人間の集まりに出会う可能性が高くなることかもしれない。
ひとりでご飯を食べて何が悪いのか。
友達は少なくても困らない。
部活なんて万年幽霊部員。
大学は楽しいけど、社会は楽しくないよ。
頑張れば頑張るほど頑張らなくてはいけない世界
学歴は人を幸せにはしてくれない。
頑張っていい大学に合格したとしよう。
長い大学受験を乗り越えて、ようやく幸せな時間が訪れる。
しかしその幸せは長くは続かない。今度は自分と同等以上の集団の中で競争を強いられる。
再び頑張って、いい企業に入社することができたとする。
すると、またしても優秀な同期と比べられながら競争しなくてはいけない。
頑張ってたどり着く先は、同じく頑張ってきた連中に囲まれて頑張らされる世界である。
頑張れば頑張るほど、もっと頑張らなくてはいけなくなる。
学歴がいいと、頑張れると思われてしまう。
しかし、大学までに頑張るのは勉強だが、社会で頑張るのは勉強以外である。
頑張る内容が変わるのだから、同じように頑張れるとは限らない。
なのに「あいつは頑張れない。無能だ」という誹りを受けるのである。
向上心にあふれ、努力し続けて成長したい!という人は好きにやってほしい。
だが、世の中そんな人間ばかりではない。無理に頑張れば疲れてしまう。
はじめから学歴なんかなければ、もっと気楽な人生を歩めたかもしれない。
そんな後悔をするかもしれない。
どんな人生を歩めば幸せかは自分で決めよう。
まとめ
以上とりとめのない内容ではあったが、ここまでお付き合いいただいた方には感謝したい。
具体的なエピソードについては記事内であまり触れていないが、官僚の話は結構面白かった。
優秀でタフな人が世の中にはいて、おかげで日本社会が回っている。私にはとても不可能な生き方に、憧れはしないものの畏敬の念を抱かざるを得なかった。
読む人の背景によってかなり違った感想を持つ本だと思うので、興味が湧いたら読んでみてはいかが。