これ以降、フーリエ変換を記号\(\mathcal{F}\)で表すことにします。
すなわち、フーリエ変換および逆フーリエ変換は次のように記述されます。
$$\mathcal{F}[g(t)]=G(f) :フーリエ変換$$
$$\mathcal{F}^{-1}[G(f)]=g(t) :逆フーリエ変換$$
フーリエ変換の加算性
2つの関数\(g_1(t)、g_2(t)\)に対するフーリエ変換をそれぞれ\(G_1(f)、G_2(f)\)としたとき、任意の定数\(a_1、a_2\)に対し次の関係が成り立つ。
$$\mathcal{F}[a_1g_1(t)+a_2g_2(t)]=a_1G_1(f)+a_2G_2(f)$$
すなわち、二つの関数の線形和のフーリエ変換は、それぞれの関数のフーリエ変換の線形和である。
導出
フーリエ変換の加算性は積分の加算性による。
\[
\begin{align*}
\mathcal{F}[a_1g_1(t)+a_2g_2(t)] & =\int_{-\infty}^{\infty}(a_1g_1(t)+a_2g_2(t))e^{-2\pi ift}dt \\
& =a_1\int_{-\infty}^{\infty}g_1(t)e^{-2\pi ift}dt+a_2\int_{-\infty}^{\infty}g_2(t)e^{-2\pi ift}dt \\
& =a_1G_1(f)+a_2G_2(f)
\end{align*}
\]
振幅スペクトルと位相スペクトル
\(G(f)\)は複素数関数なので、
$$G(f)=G_r(f)+iG_i(f)$$
のように実部と虚部に分解される。さらに、\(G(f)\)は絶対値\(|G(f)|\)と偏角\(\phi(f)\)を用いて
$$G(f)=|G(f)|e^{i\phi(f)}$$
と表すこともできる。
このとき、\(|G(f)|\)を振幅スペクトル、\(\phi(f)\)を位相スペクトルと呼ぶ。振幅スペクトルは分解された各周期関数の強さ、位相スペクトルは各周期関数のタイミングと関係する。
振幅スペクトル\(|G(f)|\)、位相スペクトル\(\phi(f)\)、実部\(G_r(f)\)、虚部\(G_i(f)\)の間には以下の関係式がある。
$$|G(f)|=\sqrt{G_r(f)^2+G_i(f)^2}$$
$$\tan\phi(f)=\frac{\sin\phi(f)}{\cos\phi(f)}=\frac{G_i(f)}{G_r(f)}$$
フーリエ変換の対称性
実数関数\(g(t)\)のフーリエ変換\(G(f)=G_r(f)+iG_i(f)\)の対称性に関し、以下の関係式が成り立つ。
$$G_r(-f)=G_r(f) (f=0で線対称な偶関数)$$
$$G_i(-f)=-G_i(f) (f=0で点対称な奇関数)$$
$$G(-f)=G^*(f) (G^*=G_r(f)-iG_i(f))$$
$$|G(-f)|=|G(f)|$$
この性質から、\(f\ge0\)の\(G(f)\)がわかれば\(f\lt0\)の\(G(f)\)が自動的に決定されることがわかる。
導出
まず、\(G_r(f)\)と\(G_i(f)\)を計算する。
\[
\begin{align*}
G(f) & =\int_{-\infty}^{\infty}g(t)e^{-2\pi ift}dt=\int_{-\infty}^{\infty}g(t)(\cos(2\pi ft)-i\sin(2\pi ft))dt \\
& =\int_{-\infty}^{\infty}g(t)\cos(2\pi ft)dt-i\int_{-\infty}^{\infty}g(t)\sin(2\pi ft)dt=G_r(f)+iG_i(f)
\end{align*}
\]
cosは偶関数、sinは奇関数であることから
\[
\begin{align*}
G_r(-f) & =\int_{-\infty}^{\infty}g(t)\cos(-2\pi ft)dt \\
& =\int_{-\infty}^{\infty}g(t)\cos(2\pi ft)dt=G_r(f)
\end{align*}
\]
\[
\begin{align*}
G_i(-f) & =-\int_{-\infty}^{\infty}g(t)\sin(-2\pi ft)dt \\
& =\int_{-\infty}^{\infty}g(t)\sin(2\pi ft)dt=-G_i(f)
\end{align*}
\]
である。これを用いると
\[
\begin{align*}
G(-f) & =G_r(-f)+iG_i(-f) \\
& =G_r(f)-iG_i(f)=G^*(f)
\end{align*}
\]
\[
\begin{align*}
|G(-f)| & =\sqrt{G_r(-f)^2+G_i(-f)^2} \\
& =\sqrt{G_r(f)^2+G_i(f)^2}=|G(f)|
\end{align*}
\]
となる。
偶関数と奇関数のフーリエ変換
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