三角関数のフーリエ変換
これまで、フーリエ変換は信号\(g(t)\)を周期関数に分解するということを学んできた。
では、三角関数のように元々分解されている周期関数はどのようにフーリエ変換したらよいかを考えよう。
\(\delta\)関数
準備のため、\(\delta\)関数に関する以下の公式を導出しておく。
$$\delta(f-f’)=\int_{-\infty}^{\infty}e^{2\pi i(f-f’)t}dt$$
(証明)
フーリエ変換と逆フーリエ変換により導くことができる。
\[
\begin{align*}
G(f) & =\int_{-\infty}^{\infty}g(t)e^{-2\pi ift}dt \\
& =\int_{-\infty}^{\infty}g(t)\left[\int_{-\infty}^{\infty}G(f’)e^{2\pi if’t}df’\right]e^{-2\pi ift}dt \\
& =\int_{-\infty}^{\infty}G(f’)\left[\int_{-\infty}^{\infty}e^{2\pi i(f’-f)t}dt\right]df’
\end{align*}
\]
ここで、\(delta\)関数の性質
$$G(f)=\int_{-\infty}^{\infty}G(f’)\delta(f’-f)df’$$
と見比べると、
$$\delta(f’-f)=\int_{-\infty}^{\infty}e^{2\pi i(f’-f)t}dt$$
を得る。デルタ関数は偶関数なので、
$$\delta(f-f’)=\delta(f’-f)$$
より、公式を得る。
(証明終)
三角関数のフーリエ変換
上のデルタ関数に関する公式を用いることで、cosやsinのフーリエ変換を行うことができる。
オイラーの公式より、
\[
\begin{align*}
g(t) & =\cos(2\pi f_0t) \\
& =\frac{1}{2}(e^{2\pi if_0t}+e^{-2\pi if_0t})
\end{align*}
\]
と書ける。すると、このフーリエ変換は
\[
\begin{align*}
G(f) & =\int_{-\infty}^{\infty}\frac{1}{2}(e^{2\pi if_0t}+e^{-2\pi if_0t})e^{-2\pi ift}dt \\
& =\frac{1}{2}\int_{-\infty}^{\infty}(e^{-2\pi i(f-f_0)t}+e^{-2\pi i(f+f_0)t})dt \\
& =\frac{1}{2}\left(\int_{-\infty}^{\infty}e^{-2\pi i(f-f_0)t}dt+\int_{-\infty}^{\infty}e^{-2\pi i(f+f_0)t})dt\right) \\
& =\frac{1}{2}\left(\delta(f-f_0)+\delta(f+f_0)\right)
\end{align*}
\]
\(g(t)=\cos(2\pi f_0t)\)のフーリエ変換は、\(f=\pm f_0\)に\(\delta\)関数のピークをもつ関数となる。なお、cos関数は偶関数なので、そのフーリエ変換は実部しか持たない。
また、\(f_0=0\)とおくと\(g(t)=1\)となり、定常関数のフーリエ変換は
$$G(f)=\delta(f)$$
のように\(\delta\)関数となることがわかる。
\(g(t)=\sin(2\pi f_0t)\)についても同様にして
$$G(f)=-\frac{i}{2}\left(\delta(f-f_0)+\delta(f+f_0)\right)$$
となる。sin関数は奇関数なので、そのフーリエ変換は虚部しか持たない。
cosやsinのフーリエ変換はそれぞれ実部のみ、虚部のみという違いがあるものの、振幅スペクトル\(|G(f)|\)やエネルギースペクトル\(|G(f)|^2\)についてはいずれも周波数\(f=\pm f_0\)にデルタ関数のピークをもつ関数という点で共通である。
その他の周期関数のフーリエ変換
周期関数\(g(t)\)は、周期\(T_0/n\)をもつcos関数とsin関数の和に分解(フーリエ級数展開)すればよい。
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