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パーシバルの定理の証明とパワースペクトルについて

パーシバル(Parseval)の定理

関数\(g(t)\)とそのフーリエ変換\(G(f)\)について、次式が成り立つ。

$$\int_{-\infty}^{\infty}|g(t)|^2dt=\int_{-\infty}^{\infty}|G(f)|^2df$$

証明

\[
\begin{align*}
\int_{-\infty}^{\infty}|g(t)|^2dt & =\int_{-\infty}^{\infty}g(t)g(t)dt \\
& =\int_{-\infty}^{\infty}g(t)\left[\int_{-\infty}^{\infty}G(f)e^{2\pi ift}df\right]dt \\
& =\int_{-\infty}^{\infty}G(f)\left[\int_{-\infty}^{\infty}g(t)e^{2\pi ift}dt\right]df \\
& =\int_{-\infty}^{\infty}G(f)G(-f)df \\
& =\int_{-\infty}^{\infty}G(f)G^*(f)df \\
& =\int_{-\infty}^{\infty}|G(f)|^2df
\end{align*}
\]

意味合い

左辺は元の信号が持つ全エネルギーに相当するため、右辺に現れる\(|G(f)|^2\)は、全エネルギーを各周波数成分に分解したときの周波数\(f\)の信号成分が持つ単位当たりのエネルギーと考えられる。

このことから、\(|G(f)|^2\)はエネルギースペクトルまたはエネルギースペクトル密度と呼ばれる。

この定理は、時間軸上でのエネルギーと周波数軸上でのエネルギーが等しいことを示している。

 

パワースペクトル

パーシバルの定理

$$\int_{-\infty}^{\infty}|g(t)|^2dt=\int_{-\infty}^{\infty}|G(f)|^2df$$

の左辺の積分は、信号\(g(t)\)が孤立した信号(ある時間範囲でしか値を持たない)場合には収束する。

しかし、ランダムな信号の場合、左辺は信号\(g(t)\)の観測時間\(T\)が増加すると発散してしまう。すると右辺のエネルギースペクトルも\(T\)の増加とともに増大してしまう。

 

これを補正する量として、次式で与えられるパワースペクトル\(P(f)\)が用いられる。

$$P(f)=\frac{1}{T}|G(f)|^2$$

ただし、\(T\)は信号の観測時間である。

 

自己相関係数

パワースペクトルと関係の深い量として、自己相関係数がある。

信号\(g(t)\)の自己相関係数\(C(t)\)を次式で定義する。

$$C(t)=\lim_{T\to\infty}\frac{1}{T}\int_0^Tg(t’)g(t’+t)dt’$$

この式は、時刻\(t’\)と時刻\(t’+t\)における信号の積の平均値を計算するもので、時間差\(t\)での信号の相関を表す。

 

信号\(g(t)\)が定常、すなわちg(t)の統計的性質が時間変化しないのであれば、この平均の原点を改めて取ることができて

$$C(t)=\lim_{T\to\infty}\frac{1}{T}\int_{-\frac{T}{2}}^{\frac{T}{2}}g(t’)g(t’+t)dt’$$

と書き直すことができる。このとき、自己相関係数\(C(t)\)をフーリエ変換するとパワースペクトル\(P(f)\)が得られる。これをウィーナー・ヒンチンの定理という。

 

ウィーナー=ヒンチン(Wiener-Khinchin)の定理

\[
\begin{align*}
\mathcal{F}[C(t)] & =\int_{-\infty}^{\infty}C(t)e^{-2\pi ift}dt \\
& =\lim_{T\to\infty}\frac{1}{T}|G(f)|^2 \\
& =P(f)
\end{align*}
\]

導出

畳み込み積分のフーリエ変換と同様に示すことができる。

\[
\begin{align*}
\mathcal{F}[C(t)] & =\int_{-\infty}^{\infty}C(t)e^{-2\pi ift}dt \\
& =\lim_{T\to\infty}\frac{1}{T}\int_{-\infty}^{\infty}\left[\int_{-\frac{T}{2}}^{\frac{T}{2}}g(t’)g(t’+t)dt’\right]e^{-2\pi ift}dt \\
& =\lim_{T\to\infty}\frac{1}{T}\int_{-\frac{T}{2}}^{\frac{T}{2}}g(t’)\left[\int_{-\infty}^{\infty}g(t+t’)e^{-2\pi if(t+t’)}dt\right]e^{2\pi ift’}dt’ \\
& =\lim_{T\to\infty}\frac{1}{T}\int_{-\frac{T}{2}}^{\frac{T}{2}}g(t’)G(f)e^{2\pi ift’}dt’ \\
& =\lim_{T\to\infty}\frac{1}{T}G(f)\int_{-\frac{T}{2}}^{\frac{T}{2}}g(t’)e^{2\pi ift’}dt’ \\
& =\lim_{T\to\infty}\frac{1}{T}G(f)G(-f)=\lim_{T\to\infty}\frac{1}{T}G(f)G^*(f) \\
& =\lim_{T\to\infty}\frac{1}{T}|G(f)|^2
\end{align*}
\]

 

まとめページ

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