グルサ(Goursat)の定理
コーシーの積分公式は、次式で与えられた。
$$f(z_0)=\frac{1}{2\pi i}\oint_C\frac{f(z)}{z-z_0}dz$$
このままでは、分母がn乗の形になっている積分を計算することができない。この公式を拡張し、n乗に対応できるようにした式
を、グルサの定理という。
グルサの定理はの見方を変えると、n階微分係数を積分表示する式になっている。
導出
コーシーの積分公式
$$f(z_0)=\frac{1}{2\pi i}\oint_C\frac{f(z)}{z-z_0}dz$$
の両辺をz0で微分すると、
$$f'(z_0)=\frac{1}{2\pi i}\oint_C\frac{f(z)}{(z-z_0)^2}dz$$
となる。もう一度微分すると、
$$f^{(2)}(z_0)=\frac{2・1}{2\pi i}\oint_C\frac{f(z)}{(z-z_0)^3}dz$$
となる。さらに微分すれば、
$$f^{(3)}(z_0)=\frac{3・2・1}{2\pi i}\oint_C\frac{f(z)}{(z-z_0)^4}dz$$
となる。これを繰り返すと
$$f^{(n)}(z_0)=\frac{n!}{2\pi i}\oint_C\frac{f(z)}{(z-z_0)^{n+1}}dz$$
を得る。
(正確には数学的帰納法による)
例題
$$(1) \oint_{|z|=2}\frac{3(z-1)^2+2(z-1)^3+(z-1)^4}{(z-1)^4}dz を計算せよ$$
(解)
$$f(z)=3(z-1)^2+2(z-1)^3+(z-1)^4$$
とすると
$$f^{(1)}(z)=6(z-1)+6(z-1)^2+4(z-1)^3$$
$$f^{(2)}(z)=6+12(z-1)+12(z-1)^2$$
$$f^{(3)}(z)=12+24(z-1)$$
グルサの定理より
\[
\begin{align*}
\oint_{|z|=2}\frac{3(z-1)^2+2(z-1)^3+(z-1)^4}{(z-1)^4}dz & =\oint_{|z|=2}\frac{f(z)}{(z-1)^4}dz \\
& =\frac{2\pi i}{3!}f^{(3)}(1) \\
& =\frac{2\pi i}{6}・12=4\pi i
\end{align*}
\]
$$(2) \oint_{|z+1|=1}\frac{1}{(z-1)(2z+1)^3}dz を計算せよ$$
定理を使える形に式変形するのがポイント。
(解)
$$f(z)=\frac{1}{8(z-1)}$$
とおくと、積分経路の内側で\(f(z)\)は正則なので微分可能である。
グルサの定理より
\[
\begin{align*}
(与式) & =\frac{2\pi i}{2!}\frac{1}{8(z-1)}・\frac{1}{\left(z-\left(-\frac{1}{2}\right)^3\right)} \\
& =\pi if^{(2)}\left(-\frac{1}{2}\right) \\
& =-\frac{2}{27}\pi i
\end{align*}
\]
線形代数学 内積の定義と正値性・対称性・線形性について 特別な行列の名前と定義・性質の一覧 対称行列と反対称行列の性質・分解公式 行列のn乗の計算方法ー4つのパターン サラスの公式による行列式の計算方法 余因[…]