ふたつの関数の積の導関数を計算したいときに便利なアイテムとして、ライプニッツの公式(ライプニッツ則)があります。
高校数学では、微分の公式として次のような積の法則
$$(f・g)’=f’・g+f・g’$$
を習ったと思います。今回は、これをn階微分に拡張した形を紹介するとともに、その証明および例題を用いて使い方を勉強していきたいと思います。
ライプニッツの公式
早速ですが、まずはライプニッツの公式を示しておきます。
$$(f・g)^{(n)}=\sum_{k=0}^{n} {}_n C_k f^{(k)} g^{(n-k)}$$
n=1とすれば、先ほどの1階微分の式に帰着します。
\begin{align*}
(f・g)^{(1)}&=\sum_{k=0}^{1} {}_1 C_k f^{(k)} g^{(1-k)}={}_1 C_0 f^{(0)} g^{(1-0)}+{}_1 C_1 f^{(1)} g^{(1-1)} \\
&=f ^{(0)} g^{(1)}+f^{(1)} g^{(0)}
\end{align*}
\]
公式の証明
nを含む公式なので、数学的帰納法を用いて示すことにします。
(証明)
(i) n=1のときは明らか(上で確認した通り)
(ii) nのときに成り立つと仮定する。n+1のとき、
\begin{align*}
(f・g)^{(n+1)} &= \left((f・g)^{(n)}\right)’=\left( \sum_{k=0}^{n} {}_n C_k f^{(k)} g^{(n-k)}\right)’ \\
& =\sum_{k=0}^{n} {}_n C_k \left( f^{(k)} g^{(n-k)} \right) \\
& =\sum_{k=0}^{n} {}_n C_k \left( f^{(k+1)} g^{(n-k)}+f^{(k)} g^{(n-k+1)} \right) \\
& =f^{(0)}g^{(n+1)}+\sum_{k=0}^{n-1} {}_n C_k f^{(k+1)} g^{(n-k)}+\sum_{k=1}^{n} {}_n C_k f^{(k)} g^{(n+1-k)}+f^{(n+1)}g^{(0)}
\end{align*}
\]
ここで、第二項が
$$\sum_{k=1}^{n} {}_n C_{k-1} f^{(k)} g^{(k)} g^{(n+1-k)}$$
と書けることと、二項係数についての関係式
$${}_n C_{k-1}+{}_n C_k = {}_{n+1} C_k (1\le k \le n)$$
を適用すると
となり、成立する
(証明終)
基本的には展開して式を整理していくだけですが、引っかかるとすれば第二項の式変形と二項係数の関係式だと思います。
この辺りは別記事で解説していく予定です。
例題
それでは、実際にライプニッツの公式を使ってn階微分を求めてみましょう。
$$f(x)=\sin^{-1} x のとき、f^{(n)}(0)を求めよ$$
(解)
\(y=\sin^{-1}x\)とすると、\(x=\sin y\)
$$f'(x)=\frac{1}{\sqrt{1-x^2}},f^{\prime\prime}(x)=\frac{x}{\left( \sqrt{1-x^2} \right)^3}$$
より、
$$(1-x^2)f^{\prime\prime}(x)=xf'(x)$$
この両辺をn(≧0)回微分すると、ライプニッツの公式より
x=0とすれば
$$f^{(n+2)}(0)=n^2f^{(n)}(0) (n=0, 1, 2, …)$$
となる。
\(f(0)=0,f'(0)=1\)なので、\(m=0,1,2,・・・\)に対して
\begin{cases}
f^{(2m)}(0)=0 \\
f^{(2m+1)}(0)=1^2・3^2・5^2・…・(2m-1)^2
\end{cases}
\]
ライプニッツの公式を使い、n階微分を漸化式の形で解くことができました。
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