1変数のとき(広義積分の定義、広義積分の収束)と同様に、重積分についても広義積分を考えていきます。
広義重積分
有界集合上の非有界関数の重積分および非有界集合上での重積分を定義する。そのために平面上の点集合(非有界でもよい)\(D\)に対して、\(D\)の近似列を次のように定義する。
近似列\(\{K_n\}_{n=1}^{\infty}\)は次の性質を持つ。
\((ⅰ)K_1\subset K_2\subset…\subset D\)
\((ⅱ)\)各\(K_n\)は有界閉集合である
\((ⅲ)D\)内の任意の有界閉集合\(K\)に対して、ある番号nをとれば、\(K\subset K_n\)
以下、\(D\)は近似列を持つとする。
\(f\)は\(D\)上の関数で、\(D\)に含まれる任意の有界閉集合上で積分可能とする(このことを、\(f\)は\(D\)上で局所可積であるという)。
\(D\)の任意の近似列\(\{K_n\}\)に対して、有限な極限値
$$J=\lim_{n\to\infty}\iint_{K_n}fdxdy$$
が存在して、かつ\(J\)の値が\(\{K_n\}\)の選び方によらないとき、\(f\)は\(D\)上で広義積分可能であるといい、この値を
$$J=\iint_Dfdxdy$$
とかく。このとき、広義積分は収束するという。
\(f\)は\(D\)上で非負値の局所可積関数とする。\(D\)のある近似列\(\{K_n\}\)で
$$\left\{\left.\iint_{K_n}fdxdy\right|n\in\mathbb{N}\right\}$$
が有界であるものが存在するとき、\(f\)は\(D\)上で広義可積となる。
例
$$\iint_{0\le x,y}\frac{dxdy}{(1+x^{\alpha})(1+y^{\beta})} (\alpha,\beta>0) の収束・発散を調べよ$$
(解)
近似列\(D_n:0≦x, y≦n\)をとれば、
よって、この広義積分は\(\alpha>1\)かつ\(\beta>1\)のときに収束する。
非負値関数
ある関数\(f\)に対して、非負値関数\(f^+\)、\(f^-\)を
$$f^{+}=\frac{1}{2}(|f|+f),f^{-}=\frac{1}{2}(|f|-f)$$
と定義する。
\(f\)が\(D\)上で積分可能であるとき、\(|f|\)が積分可能であるので、\(f^+\)も\(f^-\)も積分可能である。
定理
近似列を持つ点集合\(D\)上で局所可積な関数\(f\)に対し、以下は同値である。
\((1)f\)は\(D\)上で広義可積
\((2)|f|\)は\(D\)上で広義可積
\((3)f^{+},f^{-}\)ともに\(D\)上で広義可積
このとき、次式が成り立つ。
$$\iint_Dfdxdy=\iint_Df^{+}dxdy-\iint_Df^{-}dxdy$$
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