重積分を空間での積分に拡張していきます。
三重積分
空間の直方体分割を考えることで、三重積分を定義することができます。
xyz-空間内の点集合V上の関数f(x, y, z)の三重積分を
とかきます。
重積分の計算方法として学んだ、累次積分や変数変換の式はほぼそのままの形で成り立ちます。
三重積分の累次積分
f(P)を空間中の有界な閉領域V上の連続関数とします。
V上の点P(x, y, z)のxのとる値が\(a≦x≦a_1\)であるとき、各xに対するVの切り口を
$$V_x=\{(y,z)|(x,y,z)\in V\}$$
とすると
が成り立ちます。
Vが
と表されるとき
三重積分の変数変換
uvw-空間内の領域Ωが、変換\(Φ:(u, v, w)→(x, y, z)\)によりxyz-空間内の領域Vの上に1対1に写されるとき、
となります。変換Φのヤコビアンは以下のように与えられます。
\[
\frac{\partial(x,y,z)}{\partial(u,v,w)}=\left|\begin{array}{ccc}
\frac{\partial x}{\partial u} & \frac{\partial x}{\partial v} & \frac{\partial x}{\partial w}\\
\frac{\partial y}{\partial u} & \frac{\partial y}{\partial v} & \frac{\partial y}{\partial w}\\
\frac{\partial z}{\partial u} & \frac{\partial z}{\partial v} & \frac{\partial z}{\partial w}
\end{array}\right|
\]
よく用いられる変数変換の例を示します。
(1)空間の円柱座標
\(x=r\cos\theta、y=r\sin\theta、z=z(r≧0)\)
について
\[
J=\frac{\partial(x,y,z)}{\partial(r,\theta,z)}=\left|\begin{array}{ccc}
\cos\theta & -r\sin\theta & 0\\
\sin\theta & r\cos\theta & 0\\
0 & 0 & 1
\end{array}\right|=r
\]
$$dxdydz=rdrd\theta dz$$
と変換することができます。
(2)空間の球座標(極座標)
について
J=\frac{\partial(x,y,z)}{\partial(r,\theta,\phi)}=\left|\begin{array}{ccc}
\sin\theta\cos\phi & r\cos\theta\cos\phi & -r\sin\theta\sin\phi\\
\sin\theta\sin\phi & r\cos\theta\sin\phi & r\sin\theta\cos\phi\\
\cos\theta & -r\sin\theta & 0
\end{array}\right|=r^2\sin\theta
\]
$$dxdydz=r^2|\sin\theta|drd\theta d\phi$$
と変換することができます。
例題
$$I=\iiint_Vx^2dxdydz(V:x^2+y^2+z^2≦a^2)を計算せよ$$
(解)
と表せる。よって
$$I=\int_{-a}^adx\int_{-\sqrt{a^2-x^2}}^{\sqrt{a^2-x^2}}dy\int_{-\sqrt{a^2-x^2-y^2}}^{\sqrt{a^2-x^2-y^2}}x^2dz$$
ここで、\(-a≦x≦a\)に対してxによる切り口は
であるから、
\begin{align*}
I & =\int_{-a}^adx\iint_{V_x}x^2dydz=\int_{-a}^adx\left(x^2\iint_{V_x}dydz\right) \\
& =\int_{-a}^adxx^2|V_x|dx=\int_{-a}^adx\pi x^2(a^2-x^2)dx \\
& =\frac{4\pi}{15}a^5
\end{align*}
\]
(別解)
球座標を適用すると
$$V:0≦r≦a、0≦\theta≦\pi、0≦\phi≦2\pi$$
\[
\begin{align*}
I & =\int_0^adr\int_0^{\pi}d\theta\int_0^{2\pi}x^2r^2|\sin\theta|d\phi \\
& =\int_0^ar^4dr\int_0^{\pi}\sin^3\theta d\theta\int_0^{2\pi}\cos^2\phi d\phi \\
\end{align*}
\]
$$(x^2=r^2\sin^2\theta\cos^2\phiを用いた)$$
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