ここまで、様々な微分方程式の解法を学んできた。
ここからは、特殊な形の微分方程式をいくつか紹介していく。
まずは、ベルヌーイの微分方程式である。
ベルヌーイの微分方程式
$$y’+p(x)y=q(x)y^n (n\ne0, 1)$$
の形で表される微分方程式を、ベルヌーイの微分方程式と呼ぶ。
この方程式を解くためには、次の変数変換を行えばよい。
とおくと
$$y=z^{n-1}$$
である。また
$$\frac{dz}{dx}=\frac{d}{dy}(y^{1-n})\frac{dy}{dx}=(1-n)y^{-n}y’$$
より
$$y’=\frac{1}{1-n}y^nz’$$
これらを元の式に代入して整理する。
$$\frac{1}{1-n}y^nz’+p(x)y=q(x)y^n$$
両辺を\(y^n\)で割って
$$\frac{1}{1-n}z’+p(x)y^{1-n}=q(x)$$
両辺に\((1-n)\)をかけると
$$z’+(1-n)p(x)z=(1-n)q(x)$$
となる。これは、\(z\)の1階線形微分方程式になっているので、解くことができる。
例題
ベルヌーイの微分方程式の解き方を確認しよう。
(解)
右辺に\(y^2\)があり、ベルヌーイ型になっている。
与式に代入すると
$$-y^2z’-\frac{y}{x}=-(x+1)y^2$$
両辺を\(-y^2\)で割って整理すると
$$z’+\frac{1}{x}z=x+1$$
となる。定数変化法で\(z\)について解く。
\[
\begin{align*}
z’+\frac{1}{x}z&=0 \\
\frac{dz}{dx}&=-\frac{1}{x}zより、z=\frac{C_1}{x}
\end{align*}
\]
\(C_1=C_1(x)\)とみて元の方程式に代入すると
\[
\begin{align*}
\frac{C_1′}{x}-&\frac{C_1}{x^2}+\frac{1}{x}\frac{C_1}{x}=x+1 \\
C_1’&=x^2+x \\
C_1&=\frac{1}{3}x^3+\frac{1}{2}x^2+C
\end{align*}
\]
よって
$$z=\frac{1}{3}x^2+\frac{1}{2}x+\frac{C}{x}$$
したがって、求める解は
$$\frac{1}{y}=\frac{1}{3}x^2+\frac{1}{2}x+\frac{C}{x}$$
備考:積分因子を用いた解法
ベルヌーイの微分方程式で、\(n=0\)のとき、すなわち
$$y’+p(x)y=q(x)$$
は1階線形微分方程式になっている。
上の例題でも、\(z\)を求めるときにこの形の方程式が現れた。先ほどは定数変化法を用いたが、積分因子を用いても計算することができる。
両辺に\(h(x)\)をかける。
$$h(x)y’+h(x)p(x)y=h(x)q(x)$$
ここで、積の微分
$$(h(x)y)’=h(x)q(x)$$
のように見ると、
\[
\begin{align*}
h'(x)&=h(x)p(x) \\
\ln|h(x)|&=\int p(x)dx \\
h(x)&=exp\left\{\int p(x)dx\right\}
\end{align*}
\]
となっている。この\(h\)を積分因子と呼ぶ。
これより
$$h(x)y=\int h(x)q(x)dx$$
となり、解くことができる。
例題
先ほど定数変化法で解いた方程式を、改めて計算してみる。
(解)
積分因子
を与式の両辺にかける。
\[
\begin{align*}
xy’+y&=x^2+x \\
(xy)’&=x^2+x \\
xy&=\frac{1}{3}x^3+\frac{1}{2}x^2+C
\end{align*}
\]
よって
$$y=\frac{1}{3}x^2+\frac{1}{2}x+\frac{C}{x}$$
積分因子による方法は使わなくても解くことができるが、計算のテクニックとして覚えておいてもよい。
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