実数には様々な性質が成り立ちます。ここでは、二つの実数の間に成立する簡単な性質から学習していきましょう。
(A)四則演算
\(a, b\in \mathbb{R}\)に対して
\(a+b(和)\), \(a-b(差)\), \(ab(積)\), \(b/a(a\not =0, 商)\)
が\(\mathbb{R}\)の中に存在して、和・積について交換法則、結合法則、分配法則が成り立つ。
実数の範囲内では、四則演算を行うことができます。特に加法/乗法については、次の性質があります。
$$a+b=b+a$$
$$a×b=b×a$$
足し算、掛け算の順番を入れ替えても結果は変わりません。これを、交換法則(交換律)といいます。一方、引き算や割り算では順番を入れ替えることができません。
$$3-1\not = 1-3$$
$$a+(b+c)=(a+b)+c=a+b+c$$
$$a×(b×c)=(a×b)×c=a×b×c$$
二つ以上の同じ演算を行うとき、どの順番で演算を行っても最終的な結果は同じになります。これを、結合法則(結合律)といいます。
$$a×(b+c)=a×b+a×c$$
$$(a+b)×c=a×c+b×c$$
足し算と掛け算の二つの演算について上式が成り立つ性質を、分配法則(分配律)といいます。
特に、ひとつ目の式を左分配法則、ふたつ目の式を右分配法則とも呼びます。実数のように掛け算について交換法則が成り立つ場合、両者の区別はなくなります。
(B)大小関係
\(a,b\in \mathbb{R}\)に対して、\(a=b\)、\(a<b\)、\(b<a\)のいずれかひとつが成り立ち、次の性質を満たす。
$$(1)a<b かつ b<c ならば a<c$$
$$(2)a<b のとき、任意のc\in \mathbb{R}について a+c<b+c$$
$$(3)a<b のとき、任意のc>0について ac<bc$$
(A),(B)の性質は、実数の集合のみでなく、有理数の全体においても成立します。なぜならば、有理数同士の四則演算を行った結果はまた有理数であり、無理数にはならないためです。
次回の記事では、有理数では成立しない実数に固有の性質について書いていきますのでよければお付き合いください。
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