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数列の収束・発散とコーシーの収束判定

今回は、数列の収束・発散に関する定義とその記法について学習していきます。

数列とその表し方

数列(sequence)とは、読んで字のごとく「数を列のように並べたもの」のことです。たとえば、自然数を小さいほうから順に並べてできる

$$1, 2, 3, 4, \cdots$$

は数列となります。数列を構成するひとつひとつの数をと呼び、一番初めの項を初項、最後の項を末項とよびます。

数列に必ずしも初項と末項があるとは限りません。たとえば、自然数を順に並べてできる数列は、自然数が無限に存在するためその末項はありません。

このように、末項を定められない数列のことを無限数列、末項があるものを有限数列と呼びます。

 

数列を考えるとき、いつも数をすべてを書き下していては大変なので、

$$a_1, a_2, a_3, \cdots , a_n, \cdots$$

のように添え字を使って表します。さらに簡便に表すために、次のような書き方もします。

$$(a_k)_{(k=1,2,3,…,n,…)}, \{a_n\}^\infty_{n=1}, \{a_n\}$$

以下では、3つ目の書き方で数列を表すこととします。

数列の収束と発散

収束

数列\(\{a_n\}\)において、\(n\)を限りなく大きくするときに\(a_n\)がある定数\(\alpha\)に近づくとき、\(\{a_n\}\)は\(\alpha\)に収束する、といい、\(\alpha\)を\(\{a_n\}\)の極限値という。このことを次のように書く。

$$a_n \to \alpha (n \to \infty) または \lim_{n \to \infty}a_n=\alpha$$

この定義を数学的に表現すると、次のようになります。

 

任意の正数\(\varepsilon\)に対して、ある自然数\(N\)をとると

$$│a_n-\alpha│<\varepsilon (n\ge N)$$

が成立する。

 

どんなに小さい数\(\varepsilon\)をもってきても、\(a_n\)と\(\alpha\)と差はそれよりも小さくなる、すなわち\(a_n\)は\(\alpha\)に限りなく近くなるということです。

 

発散

収束しない数列は発散する、といいます。

\(n\)を限りなく大きくするときに\(a_n\)の値が限りなく大きくなるとき、\(\{a_n\}\)は\(\infty\)に発散するといい、

$$\lim_{n \to \infty}a_n=\infty$$

とかく。

\(-a_n\to \infty\)のとき、\(\{a_n\}\)は\(-\infty\)に発散するといい、

$$\lim_{n \to \infty}a_n=-\infty$$

とかく。

 

発散も同様に数学的に表現すると

任意の\(K\)に対し、ある\(N\in \mathbb{N}\)をとると、\(a_n>K (n\ge N)\)が成り立つ。

となります。

 

極限に関する定理

定理①

(1)極限値はただ一つしか存在しない

(2)収束する数列は、数の集合として有界である

 

定理② 極限値に成立する関係式

\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_n=\alpha、\lim_{n \to \infty}b_n=\beta\)とする。

\(\displaystyle(1)\lim_{n \to \infty}(a_n\pm b_n)=\alpha \pm \beta\)

\(\displaystyle(2)\lim_{n \to \infty}ca_n=c\alpha (cは定数)\)

\(\displaystyle(3)\lim_{n \to \infty}a_nb_n=\alpha \beta\)

\(\displaystyle(4)\lim_{n \to \infty}\frac{b_n}{a_n}=\frac{\beta}{\alpha} (a_n \not =0, \alpha \not =0)\)

\(\displaystyle(5)a_n\le b_n (n\in \mathbb{N})のとき、\alpha \le \beta\)

 

定理③ はさみうちの原理

極限値の証明などに登場する有名な原理です。

\(a_n\le b_n\le c_n\)とし、\(\{a_n\}、\{c_n\}\)がともに同じ値\(\alpha\)に収束するとき、\(\{b_n\}\)も\(\alpha\)に収束する。

はさみうちの原理を使った証明の例については、別の記事で解説しています。

 

コーシーの判定条件(数列の収束)

「問題としている数列が収束するかどうか?」を判定する方法には、いろいろな方法があります。高校数学の範囲であれば、漸化式などから一般項を計算してそれがある値に近づくことを示したと思います。

大学以降の数学で数列の収束判定をするとき、コーシー(Cauchy)の収束条件がよく用いられます。

この判定方法の優れた点は、数列の極限値を考える必要がなく、機械的に計算するだけで収束するかどうかだけを手っ取り早く知ることができることです。

 

数列\(\{a_n\}\)が収束するための必要十分条件は、任意の正数\(\varepsilon\)に対し、ある\(N\)をとると

$$│a_m-a_n│<\varepsilon (m,n \ge N)$$

が成り立つことである。

 

まとめページ

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