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接線・主法線・従法線と曲率・捩率の求め方ー円柱らせんの例

空間曲線の接線ベクトルや主法線ベクトル、従法線ベクトル、曲率および捩率の計算方法を解説する。

各用語について簡単に説明したのち、円柱らせんを用いて具体的に計算してみよう。

用語と定義式

まず、用語と定義の確認をしておく。

媒介変数を\(t\)、\(x,y,z\)方向の基底ベクトルを\(\mathbf{i},\mathbf{j},\mathbf{k}\)としたとき、曲線上の任意の点の位置ベクトルは

$$\mathbf{r}=x(t)\mathbf{i}+y(t)\mathbf{j}+z(t)\mathbf{k}$$

で与えられる。

弧長

\(t=0\)のときを基準にした弧長\(s\)をとると

$$s=\int_0^t\sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2+\left(\frac{dz}{dt}\right)^2}dt=\int_0^t\left|\frac{d\mathbf{r}}{dt}\right|dt$$

で与えられる。

接線ベクトル

接線ベクトル(速度ベクトル)は、位置ベクトルをパラメータ\(t\)で微分して求められる。

また、単位接線ベクトル\(\mathbf{t}\)は弧長\(s\)を用いて

$$\mathbf{t}=\frac{d\mathbf{r}}{ds}=\frac{d\mathbf{r}}{dt}\frac{dt}{ds}=\frac{\mathbf{r}’}{|\mathbf{r}’|}$$

で与えられる。

曲率

曲率ベクトル\(\mathbf{k}\)は、接線ベクトルを微分することで求められる。

$$\mathbf{k}=\frac{d^2\mathbf{r}}{ds^2}$$

曲率\(\kappa\)は、曲率ベクトルの絶対値

$$\kappa=|\mathbf{k}|=\left|\frac{d^2\mathbf{r}}{ds^2}\right|$$

として与えられる。

曲率ベクトルは、点\(s\)における曲線の法線ベクトルであり、接線ベクトルに直交する。

主法線ベクトル

曲率ベクトル\(\mathbf{k}\)を正規化して得られる単位法線ベクトルを主法線ベクトルといい、\(\mathbf{n}\)で表す。

$$\mathbf{n}=\frac{\mathbf{k}}{\kappa}$$

従法線ベクトル

単位接線ベクトル\(\mathbf{t}\)と主法線ベクトル\(\mathbf{n}\)の外積で与えられるベクトルを、従法線ベクトルといい、\(\mathbf{b}\)で表す。

$$\mathbf{b}=\mathbf{t}×\mathbf{n}$$

捩率

主法線ベクトル\(\mathbf{n}\)と従法線ベクトル\(\mathbf{b}\)から、捩率(れいりつ)を求めることができる。

$$\tau=-\frac{d\mathbf{b}}{ds}・\mathbf{n}$$

捩率は平面曲線における曲率の空間版に相当する。

フレネ(Frenet)標構

単位接線ベクトル\(\mathbf{t}\)、主法線ベクトル\(\mathbf{n}\)、従法線ベクトル\(\mathbf{b}\)でつくられる正規直交基底を、フレネ標構という。

 

円柱らせんの例題

空間曲線

$$\mathbf{r}=a\cos t\mathbf{i}+a\sin t\mathbf{j}+ct\mathbf{k} (a,cは定数、a\gt0)$$

で表される曲線を、円柱らせんという。

この曲線の単位接線ベクトル、単位主法線ベクトル、単位従法線ベクトル、曲率および捩率を求めよ。

 

(解)

$$\frac{d\mathbf{r}}{dt}=-a\sin t\mathbf{i}+a\cos t\mathbf{j}+c\mathbf{k}$$

$$∴\frac{d\mathbf{r}}{dt}・\frac{d\mathbf{r}}{dt}=a^2+c^2$$

\(t=0\)に対応する点から測定した曲線の長さを\(s\)とすると

$$s=\int_0^t\sqrt{\frac{d\mathbf{r}}{dt}・\frac{d\mathbf{r}}{dt}}dt=\int_0^t\sqrt{a^2+c^2}dt=\sqrt{a^2+c^2}t$$

$$∴t=\frac{s}{\sqrt{a^2+c^2}} ,\frac{dt}{ds}=\frac{1}{\sqrt{a^2+c^2}}$$

よって、単位接線ベクトルは

\[\begin{align*}
\mathbf{t}&=\frac{d\mathbf{r}}{ds}=\frac{d\mathbf{r}}{dt}\frac{dt}{ds} \\
&=\frac{1}{\sqrt{a^2+c^2}}\left(-a\sin t\mathbf{i}+a\cos t\mathbf{j}+c\mathbf{k}\right)
\end{align*}\]

となる。また

\[\begin{align*}
\frac{d^2\mathbf{r}}{ds^2}&=\frac{d\mathbf{t}}{ds}=\frac{d\mathbf{t}}{dt}\frac{dt}{ds} \\
&=\frac{1}{a^2+c^2}\left(-a\cos t\mathbf{i}-a\sin t\mathbf{j}\right)
\end{align*}\]

となるから、曲率は

$$\kappa=\left|\frac{d^2\mathbf{r}}{ds^2}\right|=\sqrt{\left(\frac{-a\cos t}{a^2+c^2}\right)^2+\left(\frac{-a\sin t}{a^2+c^2}\right)^2}=\frac{a}{a^2+c^2}$$

となる。

主法線ベクトルと従法線ベクトルは、それぞれ

$$\mathbf{n}=\frac{1}{\kappa}\frac{d^2\mathbf{r}}{ds^2}=-\cos t\mathbf{i}-\sin t\mathbf{j}$$

$$\mathbf{b}=\mathbf{t}×\mathbf{n}=\frac{1}{\sqrt{a^2+c^2}}\left(c\sin t\mathbf{i}-c\cos t\mathbf{j}+a\mathbf{k}\right)$$

となる。

また、捩率は

$$\frac{d\mathbf{b}}{ds}=\frac{d\mathbf{b}}{dt}\frac{dt}{ds}=\frac{1}{a^2+c^2}\left(c\cos t\mathbf{i}+c\sin t\mathbf{j}\right)=-\frac{c}{a^2+c^2}\mathbf{n}$$

$$∴\tau=-\frac{d\mathbf{b}}{ds}・\mathbf{n}=\frac{c}{a^2+c^2}$$

となる。

 

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