非周期関数のフーリエ変換
前回見たように、周期関数g(t)に対するフーリエ変換は、関数の周波数fとその整数倍の位置にデルタ関数が現れた。
フーリエ変換は信号を周期関数に分解する作用なので、フーリエ変換をデータ解析に応用する場合はこうした鋭いピークの位置、すなわち信号に特徴的な周波数を探すことが多い。
一方、周期性を持たない非周期関数をフーリエ変換すると、スペクトルとして連続関数が得られる。このような例として、ブラウン運動のパワースペクトルについて既に学んだ。このとき、連続関数であるローレンツスペクトルが理論的に得られた。
一般に得られる信号g(t)は、ほとんどの場合ノイズを含む。そのため、信号のスペクトルが強いピークを持たない場合、信号g(t)はノイズであると判断してしまいかねない。しかし、カオスと呼ばれる物理現象は、秩序的な信号であるにもかかわらず連続的なスペクトルを生むことが知られている。
ローレンツ方程式
今、時刻tとともに変化する変数x(t)、y(t)、z(t)を考える。これらはローレンツ方程式と呼ばれる次の微分方程式に従うものとする。
\[
\begin{cases}
\frac{dx}{dt}=-px+py \\
\frac{dy}{dt}= -xz+rx-y\\
\frac{dy}{dt}=xy-bz
\end{cases}
\]
このシステムの振る舞いは定数p、r、bによって決定される。
特に、ローレンツが与えたp=10、r=28、b=8/3によって得られるx、y、zの軌跡は下図のようになる(Wikipediaより)。
常微分方程式という決定的な運動であるにもかかわらず、長時間観測すると予測不可能な非周期的な運動である。このような現象をカオスと呼ぶ。
ローレンツ方程式のスペクトルは連続関数となり、ローレンツ方程式は非周期関数である。しかし、この運動は非周期関数であるもののランダムなノイズではないことに留意しておく必要がある。