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部分分数分解と有理関数・三角関数・無理関数の不定積分

前回は不定積分の基礎について学びました。

今回は、有理関数・三角関数・無理関数のそれぞれについて積分を行う際の方法について述べていきます。

有理関数

2つの多項式\(P(x)、Q(x)\)の比で表される関数\(f(x)=Q(x)/P(x)\)を有理関数とよびます。

有理数と同じ形に表される関数で、分数関数とも呼びます。

\(Q(x)\)を\(P(x)\)で割ったときの商を\(g(x)\)、余りを\(R(x)\)とすると、

$$Q(x)=g(x)P(x)+R(x) (Rの次数)<(Pの次数)$$

と表すことができ、

$$f(x)=g(x)+\frac{R(x)}{P(x)}$$

となります。したがって、有理関数の不定積分は

$$f(x)=\frac{Q(x)}{P(x)} (Qの次数)<(Pの次数)$$

の形の有理関数の積分に帰着できます。

分子の次数をさげていくことができる、ということです。

部分分数分解

一般に、多項式\(P(x)\)は相異なる一次式と実数解を持たない二次式によって

$$P(x)=a(x+\alpha_1)^{m_1}(x+\alpha_2)^{m_2}…(x^2+\beta_1 x+\gamma_1)^{n_1}(x^2+\beta_2 x+\gamma_2)^{n_2}…$$

$$(ただし\beta_k ^2-4\gamma_k<0)$$

と表される。ここで、係数はすべて実数とする。このとき、

$$f(x)=\sum_k \left( \sum_{l=1}^{m_k} \frac{A_{k,l}}{(x+\alpha_k)^l} \right)+\sum_k \left( \sum_{l=1}^{n_k} \frac{B_{k,l}x+C_{k,l}}{(x^2+\beta_k x+\gamma_k)^l} \right)$$

という形に分解できる。これを、部分分数分解という。

有理関数の積分において、部分分数分解は必須のテクニックになります。

上のような一般の形では少しわかりにくいですが、実際の計算は比較的シンプルです。以下の例で確認しましょう。

部分分数分解の例

$$\frac{x}{(x-1)(x-2)} を部分分数分解せよ$$

$$\frac{x}{(x-1)(x-2)}=\frac{a}{x-1}+\frac{b}{x-2}とおくと$$

\[
\begin{align*}
\frac{a}{x-1}+\frac{b}{x-2}&=\frac{a(x-2)+b(x-1)}{(x-1)(x-2)} \\
&=\frac{(a+b)x+(-2a-b)}{(x-1)(x-2)}
\end{align*}
\]

分子の係数を比較して、

$$a+b=1, -2a-b=0より(a,b)=(-1,2)$$

よって

$$\frac{x}{(x-1)(x-2)}=-\frac{1}{x-1}+\frac{2}{x-2}$$

 

$$\frac{1}{x^2(x-2)} を部分分数分解せよ$$

$$\frac{1}{x(x-2)^2}=\frac{a}{x}+\frac{b}{x-2}+\frac{c}{(x-2)^2}とおく。$$

両辺に\(x(x-2)^2\)をかけて

$$1=a(x-2)^2+bx(x-2)+cx$$

\(x=0,1,2\)をそれぞれ代入して

$$1=4a、1=2c、1=a-b+cより$$

$$(a,b,c)=\left( \frac{1}{4}, -\frac{1}{4}, \frac{1}{2} \right)$$

よって

$$\frac{1}{x(x-2)^2}=\frac{1}{4}・\frac{1}{x}-\frac{1}{4}・\frac{1}{x-2}+\frac{1}{2}・\frac{1}{(x-2)^2}$$

 

元の式は\(x=0,2\)では成立しませんが、便宜上代入することで係数を簡単に求めることができます。

 

三角関数

\(R(X, Y)をX, Y\)の有理関数、すなわち2変数\(X,Y\)の多項式の商として表される関数とするとき、\(R(\cos x, \sin x)\)の積分は有理関数の積分に帰着されます。

 

\(\displaystyle{\tan \frac{x}{2}=t}\)とおくと、

$$\cos x=\frac{1-t^2}{1+t^2}、\sin x=\frac{2t}{1+t^2}、dx=\frac{2dt}{1+t^2}$$
より
$$\int R(\cos x, \sin x)dx=\int R\left( \frac{1-t^2}{1+t^2}, \frac{2t}{1+t^2} \right)\frac{2dt}{1+t^2}$$

無理関数

無理関数の積分は置換することで計算します。

(1) \(R(x, \sqrt{ax^2+bx+c})\)の場合

(ⅰ) \(a>0\)のとき

$$\sqrt{ax^2+bx+c}=t-\sqrt{a}xとおく$$

 

(ⅱ) \(a<0\)のとき

\(ax^2+bx+c=0\)の実数解を\(\alpha, \beta(\alpha <\beta)\)とし、

$$t=\sqrt{\frac{x-\alpha}{\beta -x}}とおく$$

 

(2) \(R(x, \sqrt[n]{\frac{ax+b}{cx+d}})\)の場合

$$t=\sqrt[n]{\frac{ax+b}{cx+d}}とおく$$

 

(3) 二項積分 \(I=\int x^p (ax^q+b)^r dx\) \((p,q,r:有理数)\)の場合

\(x^q=t\)とおくと、

\[
\begin{align*}
I&=\frac{1}{q}\int t^{\frac{p+1}{q}-1} (at+b)^r dt \\
&=\frac{1}{q}\int t^{\frac{p+1}{q}+r-1} \left( \frac{at+b}{t} \right)^r dt
\end{align*}
\]

 

(ⅰ) \(\frac{p+1}{q}\)が整数のとき

$$nをrの分母とし、さらにu=(at+b)^{\frac{1}{n}}とおく$$

 

(ⅱ) \(\frac{p+1}{q}+r\)が整数のとき

$$u=\left( \frac{at+b}{t} \right)^{\frac{1}{n}}とおく$$

 

(ⅲ) \(r\)が整数のとき

$$\frac{p+1}{q}の分母をmとし、u=t^{\frac{1}{m}}とおく$$

 

まとめページ

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