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特異点とローラン展開【理工数学】

特異点と極

関数f(z)が、z=aで正則でないが、z=aの近傍では正則であるとする。

このような点aを、f(z)の孤立特異点という。特異点とは、微分不可能な点のことである。

例えば、f(z)=1/zの場合、z=0は孤立特異点である。

特異点は、その性質により次のように分類される。

除去可能な特異点

一見すると特異点に見えるが、実際にはそうではない点を、除去可能な特異点という。

 

例えば

$$f(z)=\frac{\sin z}{z}$$

は、z=0が特異点に見えるが、sinzをz=0のまわりでテイラー展開すると

$$f(z)=\frac{1}{z}\left(z-\frac{z^3}{3!}+…\right)$$

$$\lim_{z\to0}f(z)=1$$

となり、z=0は特異点ではない。

孤立特異点のなかでも、正のべき乗をかけると特異点を除去できるものを、という。

 

例えば

$$f(z)=\frac{1}{(z-a)^m}$$

はz=aで特異点であるが、これに(z-a)^mをかけると

$$\lim_{z\to a}(z-a)^mf(z)=1$$

のように特異点が消える。除去可能な特異点の場合とは異なり、元々z=aは特異点であったが、正のべき乗を掛けることで有限の値におとすことができた。

このように、

$$\lim_{z\to a}(z-a)^mf(z)$$

がある有限の値に収束するとき、特異点aはf(z)のm位の極であるという。

真性特異点

いかなるnに対しても

$$\lim_{z\to a}(z-a)^nf(z)$$

が発散してしまうとき、点aは真性特異点であるという。

 

ローラン展開

テイラー展開は正則な領域でのみ成立する級数展開なので、特異点があるときには成立しない。では、特異点のまわりではどのような展開を行うことができるだろうか。

孤立特異点のまわりでの関数の展開式を与えるのが、ローラン展開である。

 

f(z)は閉曲線Cによって囲まれた領域Dにおいて、z=aを除き正則であるとする。このとき

\[
\begin{align*}
f(z) &=\sum_{n=-\infty}^{\infty}c_n(z-a)^n \\
& =…+\frac{c_{-n}}{(z-a)^n}+…+\frac{c_{-1}}{z-a}+c_0+c_1(z-a)+…+c_n(z-a)^n+…
\end{align*}
\]

ただし

$$c_n=\frac{1}{2\pi i}\oint_C\frac{f(z)}{(z-a)^{n+1}}dz (n=0, \pm 1, \pm 2, …)$$

 

導出

f(z)の特異点である、z=aを取り囲む二つの円C1、C2(C1が内側)をとり、これらは直線Lでつながっているとする。

いま、C2とLの交点から始まる円環経路C:C2(反時計回り)→L→C1(時計回り)→-Lにおける積分を考える。

この円環領域は特異点を含まず、f(z)は正則である。よって、コーシーの積分公式を適用することができて

\[
\begin{align*}
f(z) &=\frac{1}{2\pi i}\oint_C\frac{f(z)}{z-z_0}dz \\
& =\frac{1}{2\pi i}\oint_{C_2}\frac{f(z)}{z-z_0}dz-\frac{1}{2\pi i}\oint_{C_1}\frac{f(z)}{z-z_0}dz ・・・(*)
\end{align*}
\]

となる。ただし、z0は円環領域内の点とし、Lに沿う積分は打ち消しあって0になる。

(ⅰ)C2上の周回積分について

$$C_2上の点zについて、|z_0-a|<|z-a|となるようにすれば、$$

$$\frac{1}{z-z_0}=\frac{1}{z-a}・\frac{1}{1-\frac{z_0-a}{z-a}}=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(z_0-a)^n}{(z-a)^{n+1}}$$

と展開することができ、(*)式の第一項は

$$\frac{1}{2\pi i}\oint_{C_2}\frac{f(z)}{z-z_0}dz=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{2\pi i}\oint_{C_2}\frac{f(z)}{(z-a)^{n+1}}dz・(z_0-a)^n$$

となる。

(ⅱ)C1上の周回積分について

$$C_1上の点zについて、|z-a|<|z_0-a|となるようにすれば、$$

$$\frac{1}{z-z_0}=-\frac{1}{z_0-a}・\frac{1}{1-\frac{z-a}{z_0-a}}=-\sum_{n=1}^{\infty}\frac{(z-a)^{n-1}}{(z_0-a)^n}$$

と展開でき、(*)式の第二項は

$$-\frac{1}{2\pi i}\oint_{C_1}\frac{f(z)}{z-z_0}dz=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2\pi i}\oint_{C_1}f(z)(z-a)^{n-1}dz・\frac{1}{(z_0-a)^n}$$

となる。

 

結局、これらはまとめることができて、ローラン展開式

$$f(z)=\sum_{n=-\infty}^{\infty}c_n(z-a)^n$$

$$c_n=\frac{1}{2\pi i}\oint_C\frac{f(z)}{(z-a)^{n+1}}dz (n=0, \pm 1, \pm 2, …)$$

を得る。

 

ローラン展開の主要部と特異点

ローラン展開は、特異点の周りの関数の振る舞いを記述する式である。よって、その特徴は負のべき項によって決定されることが想像できる。

特異点z=aを中心とするf(z)のローラン展開において、

$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{c_{-n}}{(z-a)^n}$$

を、f(z)の主要部という。

f(z)の孤立特異点は、主要部の振る舞いによって次のように分類できる。

(1)主要部がないとき、z=aは除去可能な特異点である。

(2)主要部が有限個の項からなるとき、z=aは極である。

(3)主要部が無限個の項からなるとき、z=aは真性特異点である。

 

 

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