流線
流線とは、流体中の1つの粒子に着目したとき、粒子の動く軌跡のことである。
別の表現をすると、流れ場中においてある曲線上の各点における接線方向と、その点での流速ベクトルの方向とが一致するとき、その曲線を流線と呼ぶ。
流線上の微小要素\((dx, dy)\)における流速を\((u, v)\)とすると、平行であることから
$$\frac{dx}{u}=\frac{dy}{v}$$
すなわち、二次元流の流線の方程式は
$$vdx-udy=0$$
である。この式は、圧縮・非圧縮や粘性・非粘性に関わらず成立する。
流線の例
非圧縮性流体の定常な二次元流において、\(u、v\)がそれぞれ\(x、y\)に比例する場合の流線を求めよ。
(解)
連続方程式より、\(u=kx、v=-ky(k:定数)\)と書ける。
流線の方程式より、
$$\frac{dx}{kx}=-\frac{dy}{ky}$$
$$\ln|x|=-\ln|y|+C$$
$$xy=(一定)$$
流線は双曲線を描く。
速度ポテンシャル
非回転流れに対し、以下の関係式を満たす関数φが存在する。
$$u=\frac{\partial\phi}{\partial x} , v=\frac{\partial\phi}{\partial y}$$
このφを、速度ポテンシャルと呼ぶ。
連続方程式に代入すると、
$$\frac{\partial^2\phi}{\partial x^2}+\frac{\partial^2\phi}{\partial y^2}=0$$
ラプラス方程式を得る。
流れ関数
ある関数ψが
$$\frac{\partial\psi}{\partial x}=-v , \frac{\partial\psi}{\partial y}=u$$
を満たすとき、この関数を流れ関数と呼ぶ。これは回転流においても存在する。
ψ=constの全微分をとると、
$$d\psi=\frac{\partial\psi}{\partial x}dx+\frac{\partial\psi}{\partial y}dy=0$$
となり、これを流線の方程式と比較すると、ψは上記の流れ関数の定義そのものになっている。
すなわち、ψ=(一定)は流線を表す。
等ポテンシャル線と流線の関係
速度ポテンシャルφ=constの曲線を等ポテンシャル線と呼ぶ。
流れ関数ψ=constの曲線を流線と呼ぶ。
非回転流では、速度ポテンシャルφと流れ関数ψがともにラプラス方程式を満たし、
$$u=\frac{\partial\phi}{\partial x}=\frac{\partial\psi}{\partial y} , v=\frac{\partial\phi}{\partial y}=-\frac{\partial\psi}{\partial x}$$
が成立する。これは、コーシー・リーマンの関係を満たし、φとψの直交性を表す。
(直交性の証明)
φ=const、ψ=constの法線ベクトルは、それぞれ
$$grad\phi=\left(\frac{\partial\phi}{\partial x},\frac{\partial\phi}{\partial y}\right)$$
$$grad\psi=\left(\frac{\partial\psi}{\partial x},\frac{\partial\psi}{\partial y}\right)$$
である。これらの内積を計算すると、
\[
\begin{align*}
grad\phi・grad\psi &=\frac{\partial\phi}{\partial x}\frac{\partial\psi}{\partial x}+\frac{\partial\phi}{\partial y}\frac{\partial\psi}{\partial y} \\
& =\frac{\partial\phi}{\partial x}\left(-\frac{\partial\phi}{\partial y}\right)+\frac{\partial\phi}{\partial y}\frac{\partial\phi}{\partial x} \\
& =0
\end{align*}
\]
となり、2つの法線ベクトルは直交している。
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