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ロピタルの定理の証明と例題、使うときの注意点

前回の記事では、不定形の極限とコーシーの平均値の定理について学習しました。

今回は、不定形の極限を簡単に求める方法「ロピタルの定理(l’Hôpital’s rule)」の証明と例題を用いた使い方、注意点について学んでいきます。

ロピタルの定理

先に、ロピタルの定理を述べておきます。

(1)\(f(x)、g(x)\)は\(x=a\)の近くで連続かつ\(a\)を除き微分可能とし、\(g'(x)\not =0\)かつ\((a)=g(a)=0\)とする。このとき、極限

$$\lim_{x\to a} \frac{f'(x)}{g'(x)}=l (-\infty <l<\infty)$$

が存在するならば

$$\lim_{x\to a} \frac{f(x)}{g(x)}$$

も存在し、\(l\)に等しい。

 

(2)\(f(x)、g(x)\)は\(x=a\)の近くで\(a\)を除き微分可能で、\(g'(x)\not =0\)かつ\(x\to a\)のとき\(g(x)\to \infty\)とする。このとき、極限

$$\lim_{x\to a} \frac{f'(x)}{g'(x)}=l (-\infty <l<\infty)$$

が存在するならば

$$\lim_{x\to a} \frac{f(x)}{g(x)}$$

も存在し、\(l\)に等しい。

 

(1),(2)は\(x\to a\pm 0\)や\(x\to \pm \infty\)の場合にも成り立ちます。

この「ロピタルの定理」を適用すると、「極限を求めたいのに不定形になっているとき、分母分子の関数をそれぞれ微分してもよい」ということになります。

何だか便利そうな気がしますよね。例題は後で示しますので、まずは証明していきたいと思います。

 

(証明)

(1)について

コーシーの平均値定理により、\(a\)に十分近い\(x\not =a\)に対し

$$\frac{f(x)-f(a)}{g(x)-g(a)}=\frac{f(x)}{g(x)}=\frac{f'(\xi)}{g'(\xi)}$$

を満たす\(\xi =\xi (x)\)が\(aとx\)の間に存在する。\(x\to a\)のとき\(\xi \to a\)なので、仮定より

$$\lim_{x\to a} \frac{f(x)}{g(x)}=\lim_{x\to a} \frac{f'(\xi)}{g'(\xi)}=l$$

 

(2)について

\(l\not =\pm \infty\)で\(x\to a+0\)の場合を考える。

任意の\(\varepsilon\)をとると、ある\(x_1>a\)について\(a<x<x_1\)なるすべての\(x\)に対して、

$$\left|\frac{f'(x)}{g'(x)}-l \right|<\epsilon$$

とすることができる。コーシーの平均値定理より

$$\frac{f(x)-f(x_1)}{g(x)-g(x_1)}=\frac{f'(\xi)}{g'(\xi)}$$

を満たす\(\xi =\xi (x) (x<\xi<x_1)\)が存在する。この分母分子を\(g(x)\)で割って

$$\frac{f(x)}{g(x)}=\frac{f'(\xi)}{g'(\xi)} \left( 1-\frac{g(x_1)}{g(x)} \right)+\frac{f(x_1)}{g(x)}、\lim_{x\to a+0} \left( \frac{f(x)}{g(x)}-\frac{f'(\xi)}{g'(\xi)} \right) =0$$

したがって、ある\(\delta >0\)をとれば、\((ただしa+\delta <x_1)\)

$$\left|\frac{f(x)}{g(x)}-\frac{f'(\xi)}{g'(\xi)} \right|<\epsilon (a<x<a+\delta)$$

よって、\(a<x<a+\delta\)なるすべての\(x\)に対して

$$\left|\frac{f(x)}{g(x)}-l \right| \le \left|\frac{f(x)}{g(x)}-\frac{f'(\xi)}{g'(\xi)} \right|+\left|\frac{f'(\xi)}{g'(\xi)}-l \right|<\epsilon +\epsilon=2\epsilon$$

これは

$$\lim_{x\to a+0} \frac{f(x)}{g(x)}=l$$

であることを示している。

 

同様にして\(\displaystyle{\lim_{x\to a-0} \frac{f(x)}{g(x)}=l}\)を示すことができる。\(l=\infty\)または\(l=-\infty\)の場合も同様。

また、\(x\to \infty\)の場合は次のようにして\(x\to \pm 0\)の場合に帰着できる。

$$\lim_{x\to \infty} \frac{f(x)}{g(x)}=\lim_{x\to +0} \frac{f(\frac{1}{x})}{g(\frac{1}{x})}=\lim_{x\to +0} \frac{-\frac{f'(\frac{1}{x})}{x^2}}{-\frac{g'(\frac{1}{x})}{x^2}}=\lim_{x\to +0} \frac{f'(\frac{1}{x})}{g'(\frac{1}{x})}=\lim_{x\to \infty} \frac{f'(x)}{g'(x)}$$

(証明終)

 

ロピタルの定理の適用例

(1)\(\displaystyle{\lim_{x\to 0} \frac{\sin x}{x}}\)

はさみうちの定理(参照)を使って証明される有名な極限ですが、ロピタルの定理で結果を確認することができます。

$$\lim_{x\to 0} \frac{\sin x}{x}=\lim_{x\to 0} \frac{(\sin x)’}{x’}=\lim_{x\to 0} \frac{\cos x}{1}=1$$

(2)\(\displaystyle{\lim_{x\to 0} \frac{e^x-x-1}{x^2}}\)

\(\exp(x)\)を含む例です。ロピタルの定理を繰り返し適用していきます。

$$\lim_{x\to 0} \frac{e^x-x-1}{x^2}=\lim_{x\to 0} \frac{e^x-1}{2x}=\lim_{x\to 0} \frac{e^x}{2}=\frac{1}{2}$$

(3)\(\displaystyle{\lim_{x\to 0} x\log x}\)

一見すると分数の形になっていないので使えないと思うかもしれませんが、少し工夫してあげることで適用することができます。

$$\lim_{x\to 0} x\log x=\lim_{x\to 0} \frac{\log x}{\frac{1}{x}}=\lim_{x\to 0} \frac{\frac{1}{x}}{-\frac{1}{x^2}}=\lim_{x\to 0} (-x)=0$$

 

ロピタルの定理の注意点

単に微分するだけで不定形の極限を求めることができるロピタルの定理ですが、使用上の注意点がいくつかあります。

(1)適用条件を正しく判断しなければならない

上の例では簡単な計算のみを記述しましたが、この定理を”正しく”用いるためにはもう少し慎重に行う必要があります。何でもかんでも微分すれば答えが分かる、という簡単な話ではありません。

そもそも不定形になっていない場合や、微分した結果振動してしまう場合もありますし、そもそも導関数を導くときに使った極限をロピタルの定理で導出することは不合理です。

したがって、証明として用いることは控えた方が賢明です。

(2)高校数学の範囲外である

範囲外の知識を使ってはいけないわけではありませんが、覚悟を持って使う必要があります。適用不可能である場合はもちろん、記述問題で証明なしにこの定理を使った場合などはほとんど点がもらえない可能性が高いです。結果が正しければ1点くらいもらえるかもしれませんが…

きちんと証明して正しく使えば問題はないでしょうが、ロルの定理⇒コーシーの平均値の定理⇒ロピタルの定理の流れをきちんと理解することは容易ではないですし、この証明を記述する時間と知識があれば正攻法でも解けてしまうでしょう。

したがって、検算程度に使うことをおすすめします。

 

まとめ

ロピタルの定理は不定形の極限を求めるための強力な手段ではありますが、魔法の方法ではないことに注意してください。

ただ、知っておくことで簡単に検算することができますし、極限の公式を忘れてしまった場合に値を確認するときなどに便利な定理であることに違いはありません。

 

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