微分方程式を解く上で、複素数(complex number)を用いる場面も多くあります。なのでここで複素数の基礎について学んでおきましょう。
複素数の基礎
$$二つの実数x, yに対して、z=x+iyと表される数zを複素数と呼ぶ$$
$$ここでxをzの実部、yをzの虚部といい、それぞれRez、Imzと表す$$
$$z=x+iyに対し、x-iyをzの共役複素数と呼び、\overline{z}とかく$$
次式が成り立ちます。
$$Rez=\frac{z+\overline{z}}{2}、Imz=\frac{z-\overline{z}}{2i}$$
$$\overline{z_1\pm z_2}=\overline{z_1}\pm \overline{z_2}、\overline{z_1z_2}=\overline{z_1}・\overline{z_2}、\overline{z_1/z_2}=\overline{z_1}/\overline{z_2}$$
複素平面
z=x+iyに座標平面上の点(x, y)を対応させることで、複素数が平面上の点を表すとみることができます。このようにしてできる座標平面を、複素平面(ガウス平面)と呼びます。
複素数zに、点zの表す位置ベクトルを対応させることで、zは複素平面上のベクトルを表すとも考えることができます。
(複素平面は長らく高校数学から除外されていましたが、今は学ぶようですね)
極形式
$$z=x+iyに対して、\overrightarrow{Oz}の長さをr、\overrightarrow{Oz}と正の実軸のなす一般角を\thetaとすると、$$
$$z=r(\cos\theta +i\sin\theta)$$
$$と表される。この表し方を、zの極形式と呼ぶ$$
$$r、\thetaをそれぞれzの絶対値、偏角といい、|z|、argzで表す。よって、$$
$$|z|=\sqrt{x^2+y^2}、|z|^2=z\overline{z}、\cos\theta=\frac{x}{\overline{z}}、\sin\theta=\frac{y}{\overline{z}}$$
複素数値関数の微分・積分
実変数tによる複素数値関数z=z(t)は
$$z(t)=u(t)+iv(t) (u(t)=Rez(t)、v(t)=Imz(t))$$
と二つの実数値関数の組み合わせで表されます。
$$z(t)の微分、積分を次式で定義する$$
$$z’=u’+iv’、\int zdt=\int udt+i\int vdt$$
$$このとき、次が成り立つ$$
$$Rez’=(Rez)’、Imz’=(Imz)’、Re\int zdt=\int Rezdt、Im\int zdt=\int Imzdt$$
$$\overline{z}(t)=u(t)-iv(t)とおくと、(\overline{z})’=\overline{z’}、\overline{\int zdt}=\int \overline{z}dt$$
さて、z(θ)=cosθ+isinθについて考えてみます。
$$z'(\theta)=-\sin\theta+i\cos\theta=iz(\theta) かつ z(0)=1$$
微分するとiが出てきて、θ=0のときに1をとる関数ということで、cosθ+isinθをexp(iθ)とかくことが理解できます。
指数関数と複素数
$$e^zを一般の複素数z=a+ibに対して$$
$$e^{a+ib}=e^ae^{ib} すなわち、|e^{a+ib}|=e^a、arg(e^{a+ib})=b$$
$$と定義する(zが実数のときはこれまでのものと一致する)。このとき、次が成り立つ$$
$$e^{z_1}e^{z_2}=e^{z_1+z_2}、(e^z)^m=e^{mz}(m\in \mathbb{Z})、\overline{e^z}=e^{\overline{z}}$$
$$\alpha=a+ibとおくと、(e^{\alpha t})’=(e^{at}e^{ibt})’=ae^{at}e^{ibt}+e^{at}・ibe^{ibt}=(a+ib)e^{at}e^{ibt}=\alpha e^{\alpha t}$$
よって、
$$(e^{\alpha t})’=\alpha e^{\alpha t}$$
また、α≠0のとき、
$$\int e^{\alpha t}dt=\frac{1}{\alpha}e^{\alpha t}$$
指数が複素数になっても、基本的には実数のときと大きく変わらず計算することができることがわかりました。