前回(偏微分の応用①曲面)に引き続き、偏微分の応用について考えていきます。
今回は極値について例題を交えて学んでいきましょう。
極値
極値の定義は以下の通りです。
関数\(f(P)\)が点\(P_0\)を含むある領域で定義されているとする。
\(P_0\)の近くで\(f(P)\le f(P_0)\)が成り立っているとき、\(f\)は\(P_0\)で広義の極大になるといい、\(f(P_0)\)を広義の極大値という。
このとき、特に\(P\not=P_0\)では\(f(P)<f(P_0)\)となるとき、\(f\)は\(P_0\)で極大であるという。
同様にして、広義の極小(値)および極小(値)が定義される。
(広義の)極大値と極小値を総称して極値とよぶ。
\(f\)が\(P_0\)で最大値または最小値をとるとき、\(f(P_0)\)は広義の極大値または極小値となります。
例題:三角形の面積を最大にする
(証明)
三辺の長さが\(x, y, z\)の三角形の面積\(S\)は、ヘロンの公式より
ここで、\(f(x, y)=(s-x)(s-y)(x+y-s)\)とおく。\((x, y)\)の変域は
$$D:s-x>0,s-y>0,x+y-s>0$$
であるが、閉領域
$$\overline{D}:s-x\le0,s-y\le0,x+y-s\le0$$
上に変域を拡張して考える。
\(f\)は\(\overline{D}\)上で連続かつ\(\overline{D}\)は有界閉集合なので、\(f\)は\(\overline{D}\)上で最大値をとる。
ところで、\(f\)は\(D\)の境界上で0かつ\(D\)上で正なので、最大値を与える点は\(D\)内に存在する。よって、その点\((x, y)\)は
$$f_x(x,y)=-(s-y)(x+y-s)+(s-x)(s-y)=0$$
$$f_y(x,y)=-(s-x)(x+y-s)+(s-x)(s-y)=0$$
をみたす。これより、
$$x=y=z=\frac{2}{3}s$$
を得る。したがって、\(S\)は正三角形のときに最大となる。
(証明終)
極大値・極小値となる条件
\(f(x,y)\)は点\(P_0(x_0,y_0)\)の近くで\(C^2\)級とし、\(\mathrm{grad}f(P_0)=0\)とする。
このとき、\(D=\{f_{xy}(P_0) \}^2-f_{xx}(P_0)f_{yy}(P_0)\)とおくと、
\((1)D<0かつf_{xx}(P_0)>0ならば、fはP_0で極小\)
\((2)D<0かつf_{xx}(P_0)<0ならば、fはP_0で極大\)
\((3)D>0ならば、fはP_0で極値ではない\)
勾配についてはベクトル解析のページをご参照ください。
ラグランジュの未定乗数法
\(\phi(x,y,z)、f(x,y,z)\)を\(C^1\)級関数とする。点\(P(x,y,z)\)が\(\phi(x,y,z)=0\)を満たしながら変わるとき、\(f(x,y,z)\)が点\(P=P_0\)で広義の極値をとるならば、\(\mathrm{grad}\phi(P_0)=0\)なので
$$\mathrm{grad}f(P_0)=\lambda\mathrm{grad}\phi(P_0)$$
を満たす定数\(\lambda\)が存在する。これをラグランジュの未定乗数法という。
例題
\(\phi(x,y,z)=x+y+z-a\)、\(f(x,y,z)=x^py^qz^r\)とおく。
\(P_0(x_0,y_0,z_0)\)で\(\mathrm{grad}\phi(P_0)=(1,1,1)\not=0\)より、ある\(\lambda=\lambda_0\)で
$$\mathrm{grad}f(P_0)=\lambda_0\mathrm{grad}\phi(P_0)$$
が成立する。
$$∴\frac{p}{x_0}=\frac{q}{y_0}=\frac{r}{z_0}、x_0+y_0+z_0=a$$
これらから
$$(x,y,z)=\left(\frac{pa}{p+q+r},\frac{qa}{p+q+r},\frac{ra}{p+q+r} \right)$$
のとき
$$最大値 p^pq^qr^r\left(\frac{a}{p+q+r} \right)^{p+q+r}$$
をとることがわかる。
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